変な映画が観たい

しがないWEBデザイナーです。映画と音楽とデザイン関連のこと適度に適当に書きとめます。

イギリスドラマ『THE FALL 警視ステラ・ギブソン』が案外おもしろいということを伝えたい。

ある日の夜中、なんとなくテレビをつけるとこのドラマの最終回が放送されていた。

「あれ、なんかスカリー出てるな」って。思った。

スカリーとは、某「Xファイル」というアメリカで制作された超大ヒットドラマの主要キャラクターのことですね、はい。

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※スカリー

スカリーを10年近くに渡って演じていたジリアン・アンダーソンさんはもう何に出ていてもスカリーにしか見えない、というジレンマを抱えているにも関わらず、映画・ドラマ・舞台と地道な活動、そして案外それがちゃんと評価されているという希少な女優さんであります。

そんな彼女を久しぶりに観た、それが『THE FALL 警視ステラ・ギブソン』だったのです。

 

でも放送に気づいたときには既に最終回だったので話の内容はまったく分からなかった。

けれど陰鬱で不穏な雰囲気と絵力はなかなか惹きつけられるものがあったので、後日、DVDレンタルで確認。

そしてコレがまぁ、なんというか、変な作りで面白かった。

 


「THE FALL 警視ステラ・ギブソン」トレーラー(ストーリー篇) - YouTube

 

一体なにが変なの?おかしげなの?

 

というわけで本作の見所を3点に絞ってお伝えしたいと思います。

 

1.事件の解決が目的となっていない犯罪ドラマ

ストーリーの概略は「ある連続殺人事件の犯人を主人公が追いつめる」という、何ともありきたりなハナシなわけです。

それなのに本作は通常の犯罪捜査ドラマとは全く異なっていたのであら不思議。

何故ならば、「事件の解決が目的となっていない」からなのですね。

 

犯罪ドラマだっつーのに犯罪を解決しないドラマとはこれいかに。

そんなドラマ、果たして面白いの?

というか、そもそも話が成り立つか?

等々、いろいろ疑問はありますね。

しかしこれがオモシロイんだなー。

 

「犯罪解決を目的としていない」とは書きましたが、もちろんストーリーは事件解決に向けて捜査が進んでいきます。

本作はいわゆる倒叙形式を取っているため、観客はあらかじめ犯人と犯行内容が分かった状態です。

そして物語の冒頭から主人公のステラと犯人スペクターの生活を細かくカットバックし、常に2人を対比させながら話が進んでいきます。

2人のそれぞれの私生活、スペクターの犯行とステラの捜査を細かく積み上げていくスタイルは、犯罪捜査ドラマというより2人の対照的な人物を客観視することで、2人の深層に迫っていく、という人間ドラマ的側面があります。

まぁ、深層に迫るとは言いつつも2人のうちのどちらも頭おかしい感じなので共感はできないな。

でもこの2人の対比のさせ方は面白いです。

 

2.北アイルランドベルファストという舞台

そしてもう一つ非常に興味深いな、と感じ入ったところは、ドラマの舞台が北アイルランドだということです。

このドラマを観て初めて北アイルランド問題*1について調べた訳ですが、そういう歴史的背景を知った上で観るとまた面白さが違ってくるかと思います。

 

同じ国とは言え、本土(イギリス)から派遣されてくるステラに対する周囲の微妙な雰囲気というか、そのぎこちなさは時にピリっとさせたり、クスっと笑わせたりと、絶妙に中途半端な距離感でなかなか面白いです。

 

そういった背景を全面に押し出さずに根底に流すことで、ストーリー全体を引き締めるという非常に効果的なスパイスとして使っている所は上手いな、と感じ入りました。

 

3.何だかおかしなカメラワーク

まぁこの通りなんですが、このドラマは観ていると「これどうやって撮影してるんだろうか」というようなカメラワークが幾つかあります。

例えば上のトレーラーにもちょっと入っていましたが、スペクターが鏡の前に立って自分の顔をド正面から見る、というシーン。

普通だったら鏡を見るシーンは角度を付けないとカメラが移り込んでしまいますので、正面から撮影しません、というか物理的に無理なのです。

にも関わらず、スペクターと同じ目線で鏡に映った対象(スペクター自身)をカメラで捉え、更にその対象が鏡に向かってデジカメで自らの写真を撮る、という何とも不思議なシーンが入っています。

その一連の流れはCGかな、とも思ったのですが、あまりに自然な流れのように見せかけつつも、普段では絶対にあり得ない角度からの撮影、という違和感がすごかったので無茶苦茶印象に残りました。

 

また、部屋の中を行ったり来たりするシーンも、真上から部屋の中を横断して撮影し、まるでワンシーンかのように撮っています。

ここはCGぽかったけど、イニャリトゥが『バードマン』でやってたように長回し用のセットを組んで撮影したとも限らない。

が、ワンシーンの為だけに部屋のセット組むかなぁあぁぁ?

とか、いきなりおかしなカットが割り込んで来たりするので、非常に気になります。

 

まぁ撮影カメラの事なんて良く知りはしないし、変なカットは全部CGなのかも知れません。

しかし一見すると新しい動き方でカメラが動くので非常に観ていて愉快ですね。

そしてこういう違和感を容赦なくぶっ込んでくる感じが作り手の意気込みを感じてもうたまりません。

 

 

とまぁ、うだうだと書き連ねましたが、1シーズン5話という手軽さもあるので、気になる方は是非に。

現段階でシーズン2が作られているけれどもまだ日本では観れないということと、また、シーズン3まで制作が決定している、という事を付け足しておきます。


The Fall Series 2 Trailer - BBC Two - YouTube

 

 

*1:

北アイルランドの少数派カトリック系住民の差別撤廃を目指す公民権運動が,1968年10月プロテスタント系住民と衝突して以来尖鋭化して起こった一連の事件。1921年にアイルランドイギリスから独立した際,北アイルランドの人口 150万の 3分の2に達するプロテスタント系住民が支配的地位を占め,カトリック系住民との宗教的対立や差別問題が生じた。