変な映画が観たい

しがないWEBデザイナーです。映画と音楽とデザイン関連のこと適度に適当に書きとめます。

フランス映画祭2016で『アスファルト』を観てきた

ハイ、ということで、フランス映画祭2016へ行ってきましたわい。

unifrance.jp


基本的に映画祭は余程の事がないと行かないのですが、今回はまぁ、余程のことがあったわけですね!
その余程のこととは!!

イザベル・ユペール襲来ですよ!!!

10年ぶりですよ!!!!
これは行くしかない。
次に肉眼で本人を見る機会なんて

もう一生無いかも!!!!!!!!!

てな具合です。

ユペールの映画は『愛と死の谷』『アスファルト』の2本です。
それぞれレビューを書きたいのですが、今回は『アスファルト』。


アスファルト


映画『アスファルト』予告編

9月3日公開に先駆けて観てきたわけですが、イザベル・ユペールの舞台挨拶付きというアリエナイようなお宝回…!
イザベル・ユペールは神々しくて思わず拝みたくなりました。
菩薩か。

で、肝心な映画の方はと言いますと、正直、9月の本公開が待ちきれない。
そのくらい良かったっす。

作品としての好き度で言ったら今年1番かもしれません。
というか、全映画人(俳優・監督・故人含む)の中で1番好きなのがイザベル・ユペールなので、かなりファン目線の評価に成らざるを得ませんが。

いや、でも本当にもう…たまらん………
たまらん…!!

いやぁ、この感想だけだと、ただただ気持ち悪いヤツでしかないので意味が分からないですよね、ご説明(釈明)させてください。

 

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本作はフランス郊外にある寂れた団地が舞台です。
その団地に住む人々の交流を3部構成で描いたほのぼのヒューマンコメディ。


かなり笑えます。めっちゃおかしい。


テンポが良いので清々しく、どの国の人にもわかるような普遍性があります。
1人で観ても楽しいのはもちろん、家族、恋人、友人、だれと一緒でも楽しく観られるハズ。

 

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そして着目すべきは時代設定。
現代風なのだけれど、出てくるがジェットが随分と古めかしい。
スマホもパソコンも出てこない。
女優の室内にあるTVはディスプレイ式だが、そこにはVHSが繋がれている。
そして青年の家にあるTVはブラウン管。
にもかかわらず妙にしっくりきているから、まるでパラレルワールドに迷い込んだかのような感覚です。


そんな独特な世界観に出てくるキャラクターはみな可愛らしく、しかもその関係性が微笑ましくて本当にイイ。
ニコニコです。
素敵すぎるんです。

特に一番ぐっときたのは、ティーンエイジャーとその隣に越してきた落ち目の女優の交流を描いたパート(イザベル・ユペールだからね…)。

 

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恐らく高校生ぐらいの青年(少年?)は母親と2人暮らし、らしい。
らしいというのは、母親は一度も出てこないから。
朝になるとご飯代のお金がキッチンに置かれているだけで、彼と顔を合わせている様子はない。ほぼ一人暮らしのような生活を送っているのがなんとなく想像できる。

その隣へ大荷物を抱えて引っ越してきた1人の女性。
年齢は、母親と同じくらいなのだろうか?
寂れた団地に似つかわしくない、浮世離れした雰囲気を醸し出している。

そこでの生活に慣れない彼女を青年は気ままに、しかし甲斐甲斐しく世話を焼く。
まるで、手の掛かる母親の相手をするかのように。


親ほど年の離れた彼女は、時に少女のように気まぐれで、何だか少し謎めいている。
それとは逆に、まだ10代であろう青年は長年独り暮らしめいた生活を送っているからか、随分と大人びた印象だ。
そんなちぐはぐな2人が少しずつお互いの孤独を感じ取り、心を通わせていく。

 

さすがに恋に発展することはないだろうと高をくくるが、青年の大人びた態度と彼女の可憐なしぐさに思わず心が奪われる。
そして2人の視線の交わりに、ついドキリとしてしまうのだ。

 

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これはなかなかあり得ないケミストリー。

演じるジュール・ベンシェトリ君のナチュラルで清廉な佇まい、そしてイザベル・ユペールの世間知らずで生活感のない雰囲気が功を奏しており、いやらしさが全くない。

性的な魅力とは別次元で、お互いの孤独を補うように惹かれあっていく様子は微笑ましくも、ほんの少し、切ない。

 

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もうね、響きまくりですよ。

出てくる人たち全てが愛おしく感じる。

幸せになってほしい。
幸せであってほしい。
心穏やかでいてほしい。

そう願わずには居られない。

ずっとこの映画のことばかり考えてしまう。
それほどに、好きになってしまった。

もうなんていうか、好きというより、愛しています。

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やー、観て欲しいし、自分も観に行きたいなと、思わずにはいられないわけです。
なのでね、公開までまだ時間もあることだし、執拗にこの映画を押していきたいと思いますわ。
 
ではまた。

2016年5月に観た映画

もー6月に入りやした。
もうそろそろ半年たってしまう。
ぎょっとする気持ちで5月中に観た映画は以下。

 

【劇場/新作】

計8本

こんな感じでした。
数がいつもより押さえられて良かったですわ。

本数が少ないので、今回は1本ずつ書きました。

 


『シビル・ウォー』

期待してませんでしたが、けっこー良かったです。
わちゃわちゃしてて、よく分からない部分もあるかもしれませんが。
そういった場合は、町山智浩さんが「映画ムダ話」で解説してらっしゃるので聴いてみるといいかもしれなく。
興味がある方は200円でタメになる話を聴けます。

tomomachi.stores.jp


『獣は月夜に夢を見る』

デンマーク映画ですね、これオープニングが超良かった。
芸術点高いっす。
内容は好き嫌いがありそうですが、個人的には好きですね。
言っておくが吸血鬼の話ではないです。
類似したモンスター的嘆美映画って感じです。
日本でも人気のマッツ・ミケルセンの兄、ラース・ミケルセンが主人公のお父ちゃんの役で出ています。


ちはやふる 下の句』

あまり良くなかった。
上の句が良かったので、期待しすぎた感はありますね。
でも松岡茉優さんは非常に良かった。
抜群に可愛い。
それしか無い。


『レヴェナント』

デカプーがクマに喉食い破られて、その後で水飲むときに首から水がもれちゃうシーンが良かったです。

こちらはTBSラジオたまむすびでの町山さん解説をのせておきますね。

www.youtube.com


蜜のあわれ

思ったより中途半端に感じました。
二階堂ふみちゃんと大杉漣さんはイイですよね。
鈴木清順に監督して欲しかったなぁ…


アイアムアヒーロー

で、今月で1番良かったのは『アイアムアヒーロー』ですわ。
これっきゃない。

たぎる…!
最後のゾンビ群との応戦で見せたカタルシスにはもう、参りましたね!
ほんと心が洗われるようでしたよ!
ゾンビ映画で!

大泉洋はそんなに好きではないですが、これを観て考えを改めました。
ふつうの人間の、ふつうの弱さとふつうの優しさ。

「自分の命をかけて」とか、そんな格好いいもんじゃない。
「自分ができることを最後までやり通す」という覚悟。
かっこいいったらないですわ。

こちらはTBSラジオシネマハスラー宇多丸さんが絶賛解説してた音源を載せておきます。

www.youtube.com


世界から猫が消えたなら

マーケティングの上手いヒトが作った映画っていう先入観があるかも知れないけど、そんな感じの映画でした。
消えたからなんだよ。
つうか消す前にしんだらいいがね。
気取りすぎィ!


『太陽』

長く感じた。
なぜか、入江悠作品の体感は長く感じる。
嫌いな訳じゃない。
不思議だな。

リンチシーンの長回しが良かったです。
あとすごく主人公がわめくよね。
そういうの、日本映画的だけど、この場合の慟哭は、田舎者の宿命のように、どうにもならなさが堂にいってて、なんというか、少し納得してしまった。

 


と、まぁこんな感じでしたかね。
うん、では6月も適当に映画を観ます。
そんなことよりPerfumeのライブに行けることになりました。
映画よりそっちがだいじだよー。

ではまた。

2016年4月に観た映画

GW中でうっかり更新を忘れましたね。
休み過ぎて頭がぼんやりしながら書き留めた、4月に観た映画は以下の通りです。


【劇場/新作】

  • バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生
  • ちはやふる 上の句
  • スポットライト 世紀のスクープ
  • ミラクル・ニール!
  • Bite the Dust/バイツァ・ダスト
  • ハロルドが笑う その日まで

6本

 

【劇場/旧作】

6本

【DVD/動画配信】

3本


の、計15本。


旧作が多い。
我ながら4月は充実したラインナップになったなぁ。


劇場での旧作は全て恵比寿ガーデンシネマで観ました。
ガーデンシネマは旧作に力を入れているのか、デジタルリマスター上映が続いておりまして、非常に宜しい感じですね。
質良い環境で質の良い作品が観れるという贅沢さはまさに至高。
ソファのクッション具合や足元・手元の広さなど、鑑賞環境は自分が知る限り都内でも最高レベルです。
さすが恵比寿、金が掛かってる。

そしてその中でも特に『バベットの晩餐会』は観る機会があるのならば、是非観て貰いたい作品。
品性や本当の豊かさとは、ということについて深く感じ入ることの出来る作品でした。
慎ましく、うつくしく、幸福感で胸が満たされる感覚。
こういう作品に出会えると、「あー、映画観た」って感じになりますね。


第60回アカデミー賞外国語映画賞受賞作!映画『バベットの晩餐会』予告編


あとは『Bite the Dust/バイツァ・ダスト』というロシアのSFコメディ映画がとんでもなく面白かった。


Bite the Dust 予告編


予告観ただけでも面白そうでしょう。
そうなんです、面白いんです。
しかし残念ながらDVDは出ていなーい。
上映も1日きりで、非常に貴重な機会だったようです。
ラッキーでした。
こちらの映画も観ることが出来るタイミングがあれば是非観た方が良いかと思われます。

ロシアというだけあって、ちょっとタルコフスキー的だな、という見せ方などがあり、また映画ネタがふんだんに入っているので想像しているよりも笑えますし。

 

まぁ取りあえずこんな感じでしょうか。
5月も旧作を色々観たいなと思っております。

ではまた。

2016年3月に観た映画

3月は、割と少なめになりました。

良かったなぁ。

 

【劇場】

  • オデッセイ(2回目)
  • コードネームU.N.C.L.E.
  • キングスマン(2回目)
  • あやつり糸の世界
  • ヘイトフル・エイト
  • ロブスター
  • ハッピーアワー

計7本

 

【DVD】

計9本

 

と、こんな感じでした。2回目の鑑賞が多め。

 

しかしまぁ、2回目でも『オデッセイ』はやっぱり面白くて、そして劇場鑑賞後すぐにオデッセイのパラレルワールドこと『インターステラー』を見直しましたね!
オデッセイ直後に観るとあら不思議!違う意味で面白い!
マット・デイモンがここでもまた同じようなセリフ言ってらっしゃるわな!
着ている宇宙服のカラーバリエーションもマットだけ同じやで!
やはり君は面白い(確信)。

ジェシカ・チャステインはどっちもイイ役。


映画「オデッセイ」予告Z

 

あとは『あやつり糸の世界』もずいぶんと面白かったです。
マトリックス』は『攻殻機動隊』リスペクトとは言いつつも、絶対ここからも着想を得てただろうなと、電話ボックスシーンで思いましたね。
ヘッドギアのシーンとか。

これはもともとTV用に撮影された作品らしいですけど、こんなドラマ放送する国ってどうよ(かっけーな!)。
気になる方はどうにかして見て下さい。
レンタルにはなさそうです。


ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督 『あやつり糸の世界』予告編

 

そして忘れてはならない『ヘイトフル・エイト』。
これもむちゃくちゃ可笑しかったです。
いい話みたいな雰囲気で終わらせようとしてますが、絶望的な気持ちになりますね!どうなんでしょう!
タランティーノは『イット・フォローズ』を観て「これは女性嫌悪の映画だね」と発言して監督のデヴィッド・ロバート・ミッチェルに「違うよ」と言い返されてましたが、今度はタランティーノ本人が評論家や観客から「女性嫌悪的な映画やん」って突っ込まれてブーメラン帰ってきた感がありますな!愉快!

しかしながら、デイジー役のジェニファー・ジェイソン・リーが凄すぎて笑わずにはいられないのです。
下品で口汚くて喧しくてかわいいです。
タランティーノ作品の中で唯一ときめきを感じました。
一番好きなキャラクターかも知れない。
しかしながら今さら予告を見直してふと思ったけれど、これ密室ミステリでもなんでもないんだが。
そこは重要じゃねぇ!
なんだかなー、という感じ。


映画『ヘイトフル・エイト』予告編

 

 

そしてね、前々から観ないとなーと思っていた『ナポレオン・ダイナマイト』をようやく観ました。
もうね、サイコーだよ!!!!!!!!
このカタルシスたるや、笑いと感動で胸がいっぱいになるクライマックス。
それまでの9割オフビートな日常がラストに向けて効いてきますね。
爽やか。
晴れやか。
なんて清々しい作品なんだろうか。
痛々しい青春でいいじゃない。
ダサくてもキモくても取り柄がないと思っていても、やれることがあるんだぞと。
打たれました。
観て良かった。


Napoleon Dynamite Trailer

 

そのような感じで、4月はちょっとまた映画を観に行こうかと思います。

とりあえず恵比寿ガーデンシネマの特集上映を主に攻めていこうかと。

ではまた。

2016年2月に観た映画

今年もまた面白い映画と面白い映画祭が目白押しで、困ったもんです。
まったく、どうしてくれるんだ……
そんな悩みを抱えつつ、観ました。

【劇場/新作】

  • アメリカン・ドリーマー 理想の代償
  • オデッセイ
  • エージェント・ウルトラ(2回目)
  • グッバイ!ベルイマン
  • バードピープル
  • キャロル(2回)
  • 俳優 亀岡拓次
  • ライチ☆光クラブ
  • ゾンビマックス!/怒りのデス・ゾンビ
  • ブラック・スキャンダル
  • イット・フォローズ
  • サウルの息子

計12本

【試写会】

  • マジカル・ガール

【劇場/リバイバル】

計2本

【TV/DVD】

  • ザ・コール 緊急通報指令室
  • I'm Here

計2本

と、まぁこんな感じです。
今月からちょっとスタイルを新たに、観た映画それぞれに一言付け加えるようにしてみました(そうでもしないと長くなっちゃうからね)。

 

『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』

お金、大事

『オデッセイ』

科学の授業、大事

『エージェント・ウルトラ』

CIAはろくでもない

『グッバイ!ベルイマン

ラース・フォン・トリアーを外に出したらアカン

『バードピープル』

スズメは人かもしれない(だからいじめちゃダメ!ゼッタイ!)

『キャロル』

美しすぎて不幸

『俳優 亀岡拓次』

『俳優 安田顕』でも可

『ライチ☆光クラブ

いくら何でも中坊には見えない俳優達(中条あやみちゃんは天使)

『ゾンビマックス!/怒りのデス・ゾンビ』

世紀末はDIY精神で乗り切れる

『ブラック・スキャンダル』

ケヴィン・ベーコンが出てる

『イット・フォローズ』

性病の話ではなく、愛についてのお話

『サウルの息子』

いつの時代でも子供は希望の象徴

『マジカル・ガール』

愛と狂気は紙一重じゃなくて同じもの

ライフ・イズ・ミラクル

戦争と浮気、いくない

マッドマックス 怒りのデス・ロード』

V8!V8!V8!V8!V8!(続く)

ザ・コール 緊急通報指令室

おめぇを警察に任しておけるかっ(by ハル・ベリー)

『I'm Here』

これも愛についてのお話

 

以上。

『I'm Here』はレンタルはないのかな?動画配信もされていないように思いますが、Youtubeで観れますので載せと来ます(自分はDVD持ってるからな!と自慢)。


"I'm Here" 2010 a short film by Spike Jonze FULL

 

こうやって書き出してみると、愛情についての話は多いのかも知れないなと思いました。

『エージェント・ウルトラ』や『キャロル』、『サウルの息子』、『ライフ・イズ・ミラクル』も愛を感じます。

映画はそういうモノなんだろうか。

不思議だ。

 

しかし、観る本数がどんどん増えている…これじゃダメだ!

3月は映画観ません。

 

では、また。

『イット・フォローズ』のちょっとした解説(まがい)

『イット・フォローズ』を観ました。

これがとてもよかった。

怖さ面白さもさることながら、良い話で素晴らしい映画でした。

ホラー映画にありがちな、若い女性のセックスを戒めるような話であるとの見方もあるようですが、監督曰く「生と死と愛がテーマ」の作品らしいです。

そこら辺についてはTBSラジオたまむすびの映画コーナーで町山さんが詳しく解説しています(ネタバレはしていません)。

→テキスト:町山智浩『イット・フォローズ』『ババドック』とホラー映画を語る

→動画(音声のみ):


町山智浩がホラー映画『イット・フォローズ』を語る

 

で、この作品についてを自分なりに考えてみました。

考えずには居られなかった。

そのくらいの深い余韻があったわけです。

 

ざっと物語の概要を説明しますと、主人公である女子大生のジェイは彼氏と初めての一夜を共にするのですが、そこで彼氏は事が終わるとジェイにあることを打ち明けます。

 

「実は君と寝たのには訳がある。ある〝もの〟を移すためだ。

移された人は〝それ(it=イット)〟に死ぬまで追いかけられる。君が死ぬまでずっとだ。

〝それ〟はゆっくりと近づいてきて、君をつかまえようとするだろう。

けれど、君が捕まってしまえば、また〝それ〟は僕のところへやってくる。

だから捕まらないでくれ。早く、〝それ〟を他の人に移すんだ。」

 

感染した人にしか見えない〝それ〟は姿形を変え、ジェイを捕まえようと後を付けてきます。何処へ逃げようと、ゆっくり、ゆっくりと彼女に近づいてくる。


映画『イット・フォローズ』予告編

と、まぁだいたいこんな感じです。

なんでコレが愛やねん。

というハナシですけど。

 

↓ココからネタバレしています↓

 

結末から言ってしまいますと、最終的にジェイは幼なじみのポールと結ばれることになります。

ポールは幼い頃からずっとジェイに思いを寄せていたようです。

そして大学生になったジェイに彼氏ができてからも、〝それ〟を移された事を知ったときも、〝それ〟を移すために望まないセックスをしているときも、ずっと彼女のことを一途に想い続けてきたのです。

そしてポールは心身共に疲弊したジェイに提案します。

「もし君さえ良ければ、僕に〝それ〟を移せばいい」

しかしジェイも幼なじみであり、憎からず想っているポールに〝それ〟を移すことを1度は拒否します。

その提案の後、〝それ〟の撃退を試みるのですが、成功したかどうかは曖昧なままです。

 

これは推測ですが、恐らく一時的に撃退することはできたけれど、〝それ〟はまた姿を変えてジェイを追い続けているのかと思います。

 

〝それ〟から逃れられないと悟ったジェイは、ずっとそばにいて支え続けてくれたポールと結ばれることを選び、そして最後のカットはジェイとポールの二人が手を繋ぎ、ゆっくりと歩道を歩き始めるところで終わります(二人の後ろには〝それ〟らしきものが、後をつけてきているようにも見える)。

 

この結末がどういう事かと言えば、愛によってしか〝それ〟の連鎖を止めることができないと言うことなのでしょう。

望まないセックスをすることは時間稼ぎにしかならないわけですから。

その人が死んでしまえば、次は自分の番、そしてまた望まない行為を繰り返すしかない。

〝それ〟を移すためだけのセックスは自分本位の行為でしかありません。

この作品の中では性行為に置き換えてはいますが、どんなことにでも当てはまりますよね。

自分本位の振る舞いは、時間稼ぎやその場しのぎの行為でしかないということです。

 

最終的に〝それ〟を含めたジェイの全てを背負う覚悟でポールは彼女と結ばれる。

伴侶となる相手の運命を背負う覚悟、それが愛なのだということです。

ポールと結ばれたことによってジェイはもう他の男と寝る必要がなくなり、〝それ〟から逃げる必要もなくなるのです。

愛によって結ばれることで、生きるために死(それ)と向き合うことができるのです。

 

まぁ、本来的に人間を含めた全ての生き物は死から逃れることは出来ませんし、そういう話なんだろうなと思います。

〝それ〟がなんであれ、話の根幹は普遍的な話に帰着しているわけですね。

 

しかしながら、上記で町山さんが仰っていたドストエフスキーの「白痴」の引用や、T・S・エリオットの詩の引用が重要ってところは分かりませんでしたけど。

でもそーゆーことなのかな、と。

 

いやー、でも本当に面白かった。

映像的には人がてくてく歩いてくるだけなのにこんなに怖いとは…

音楽も良かったですし、ガジェットもいちいちオシャレで素敵です。

主人公の友人が「白痴」を電子書籍で読んでいるんですが、そのリーダーが無茶苦茶オシャレでしたね。

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調べたら、この作品のために作られた架空のガジェットらしいです。

商品化したら良いのに。

 

あと主人公のジェイちゃんを演じていたマイカ・モンローちゃん。

あの子は『ザ・ゲスト』という映画でも殺人マシーンに追いかけられてましたね。

『ザ・ゲスト』も相当面白かった。


ザ・ゲスト DVD&ブルーレイ リリース告知

『ハロウィン』のパロディっぽいサスペンス映画なので、興味のある方はそちらも観てみると良いかと思います。

 

『イット・フォローズ』の方ももう劇場ではあまりやっていませんが、観る機会があったら是非。

 

ではまた。

2016年1月に観た映画

2016年、ですね。
たいして代わり映えもなく、粛々とまとめます。
つーことで、1月に観た映画は以下。

【劇場/新作】

  • クリード チャンプを継ぐ男
  • ターボキッド
  • マッドストーン
  • エージェント・ウルトラ
  • 傷物語<Ⅰ鉄血篇>
  • カリキュレーター
  • ベテラン
  • 友だちのパパが好き
  • クリムゾン・ピーク
  • ブリッジ・オブ・スパイ

10本

【劇場/旧作】

6本

【DVD・TV】

1本

 

とまぁ、こんな感じです。
自分的にはけっこう多い方。

なので文章もちょっと長めになってしまいましたので、今回は言いたい事がある作品ごとに章立てておきますね…

 

クリード チャンプを継ぐ男』

まずこちら、大変好評な作品ですよね。
「号泣必死」という感想が多いので覚悟して観に行きましたが、正直そこまで感動せずでした。確かに面白かったんですが不思議とこのムーブメントに乗れなかったです。
「この温度差、前にも経験したな」と思ったんですが、あれだ、『ウォーリアー』の盛り上がりの時にも体感しましたね。
あの映画も「男泣き映画」って感じだったので、満を持して観に行ったのですが思いのほか普通に観てしまって拍子抜けした記憶があります。
ちょっと期待値高めすぎたのか、それとも自分が歳を取ったのか…最近映画で涙を流していないような気がします。
それはそれでとても寂しい。


「クリード チャンプを継ぐ男」特別映像

 

『エージェント・ウルトラ』

それよりか、個人的にはこちらの方が余程グッときましたですね。
ダメ男が立ち上がるっていうね。
これも王道なんですけども。
映画秘宝的に言うと「舐めてた相手が殺人マシーンでした」系映画でしょうか。
そういうの好きなんですね。
自分がダメ人間だからでしょうか。
ボンクラ野郎が主人公の方がグっときてしまう。
しかし他の「舐めてた相手が~」系と少し違うのは、彼女にプロポーズ出来るかどうかってところなんですよね。
まぁ、結局プロポーズはするんですけど、そのタイミングたるや、もうね、涙と笑顔で「ああっ」って感じです(伝わらない)。
個人的には映画史上最高のプロポーズでしたよ。
可愛いのなんのって。
それまではあまりジェシー・アイゼンバーグクリステン・スチュワートも大して好きでも何でもなかったのですが、この作品で好きになりましたね。
ベストカポーでした。
ほんとに最高でした。


映画『エージェント・ウルトラ』本編映像~ホームセンターで大暴れ!~

 

『クリムゾン・ピーク』

そして今月一番スゴイなと思ったのは『クリムゾン・ピーク』なんですよ!
何がスゴイってビジュアルが凄すぎてあっけにとられましたね。
美しいです。
いや、鬱くしいです。
ストーリー的にはいわゆるメロドラマってやつなのですが、それをゴシック(&ホラー)として魅せてるわけですね。
ゴシックロマンスというらしいですが。
そのビジュアル面の凄さは言わずもがななのですが、何より驚いたのはジェシカ・チャスティン(チャステイン?)ですかね。
彼女はまったくサイコーですね。
普段は赤毛と健康的な肌で笑顔が素敵なお姉さんですが(弟役のトムヒと共に↓)、

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今回はダークヘア&青白い顔が不健康そうな凶悪ブラコン姐さんでした(↓)。

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とてもイイ。
まぁ美しければなんでもオッケーなんですけどね。
ゴシックなゴーストストーリーだっつってんのに、彼女が出てくるシーンはサイコホラーになってました。
最高です。
2回ほど観たのですが、1回目はビジュアル面の凄さとジェシカ・チャスティン無双に気を取られてあんまりストーリーが入ってこずに、「こんなもんか」って感じだったのですが、後からよくよく思い出してみるとスゴイ映画だったなと。
後になってから感動を覚えました。
さきほどの『クリード』の話じゃないですが、「なんかこの感じ、前にも経験したことある」と思ったのです。
何で経験したかというと、なんと『マッドマックス 怒りのデス・ロード』。
マッドマックスを初めて観たときにはその興奮のあまり頭がどーにかなっていたのですが、あれもビジュアル面が圧倒的でしたよね。
またストーリーがどうの、キャラクターがどうのまで頭が追いつかなかったこともあります。
極度の興奮状態で思考が定まらずに、家に帰ってぼんやりとマッドマックスに想いを馳せていると妙に泣けてきてしまったのですね。
そんな経験はそれまでになかったように思います。


今回もそれに近いものがありました。
『クリムゾン・ピーク』を観終わってからも、しばらくあのジェスカ・チャスティン演ずるルシールの佇まいが脳裏に焼き付いて忘れられなかったのですね。
で、また観に行く、と。
彼女の美しさを観るだけでも十分ですが、主人公のミア・ワシコウスカちゃんも眼鏡っ子姿が似合っていて良かったです。
あとは日本でも大人気のトムヒさんはサービスシーンが話題なようですよ。


『パンズ・ラビリンス』のギレルモ・デル・トロ最新作!『クリムゾン・ピーク』予告編

 

クストリッツァ特集上映

そして最後にもうひとつ、これは忘れちゃいけない。
アンダーグラウンド』は恐らく、自分史上生涯ベスト級に好きな作品です。
泣きます。
もう、最後の30分間くらいずっと泣いてます。
ただ観て欲しい。
多くの人に。
これを観ずに死ぬわけにはいかないでしょう。
虚しさと愛おしさで引き裂かれそうになりながら、泣き笑ってしまう。


エミール・クストリッツァ特集上映「ウンザ!ウンザ!クストリッツァ!」

 

新作・旧作併せると16本になってしまった…

正直今年は少しペースを落としたいと思っていたんですが、なかなか上手く行かない。

2月はもっと少ない本数に留めたいです。

 

ではまた。